phanlife

yggdrasil=ragnarok

 昔むかし、数百年も前のこと。最強の魔術師と謳われ、人々の賞賛と嫉みを浴びた、一人の大怪盗が居た。
 人々は其れを哀れんだ。力在りし者こそ、人の道を外すのだと。
 人々は其れを嫉んだ。類稀なる才気、そして華麗なる手捌きを。
 そうして人々の心に深く巣食った怪盗は、いつしか姿を消した。己を明かさず、目的の有無さえも口にせず。
 予告状は紙切れと為した。人々は嘲笑った。全ては己の自己満足だったのだと。

 しかし人は誰も、盗まれる度、災厄が消えた事には見向きもしないのだ。
 私は彼を、神なのだと崇めたい。

 □古文献善書:Yggdrasil=ragnarok
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