水晶の少年 ~SEASON~

1.時を止めた年月(じかん)時間 - 由貴 -


高校三年生のクリスマスイヴ。


受験を控えた私たちには、遊ぶ余裕なんてなくて、
その日も、私・時雨・飛翔は三人で集まって
医大受験に向けて必死になっていた。



目指すは、飛翔が幼い時、通っていた
神前悧羅学院の医学部。


神前に在籍経験がある飛翔以外、
私と時雨にとっては、完全に外部入学なわけで
今日までにも、何度も試験が繰り返された。



氷雨はと言えば……時雨や私が、
進路のことを訪ねてもいつもはぐらかせてばかりで、
クリスマスイヴに彼女、妃彩ちゃんとデートの約束があるとかで
早々に飛び出していった。



だけど……その時の私は、氷雨が大変な何かを
抱え込んでいたことも、それが……親友(とも)を見送った
最期になることも知る由もなかった。











「時雨、ここの問題なんだけど」




私、氷室由貴(ひむろ ゆき)は
幼い頃から住ませて貰っている金城家の一室で、
飛翔と三人で受験勉強をしていた。



ふいに携帯電話が、ライトを点滅させながら
着信を告げる。



「時雨、携帯。
 着信、入ってるよ」


そう言いながら、時雨の携帯電話を掴んで、
彼に手渡した。



時雨は受信したそれを見つめたまま、
無言で固まった。



「時雨、何かあったの?」


問いかけるも、時雨の表情は変わらない。


すかさず、飛翔が時雨の携帯を覗きこんで
顔を歪める。


「何?
 飛翔、時雨なんのメール」


問いかける私に、時雨の手から
携帯電話を奪い取った飛翔は画面を私の方へと見せる。




送信者:
金城氷雨(かねしろ ひさめ)



添付されているのは、
小さくて見えづらい、人の顔写真。


続く本文は短い。



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