櫻~再会の願い~
公園
夕方、私は弟の耀を迎えに公園に来ていた。
気分転換にもなるからとお母さんに言われて。
6歳年下の耀は、友達とブランコでどちらがより高くこげるかを競い合っている。
私は桜の木の下にあるベンチに腰掛け、ぼんやりそれを眺めている。
「ここでよく千紗都と本を読んだなぁ……」
不意に口から零れた、小さな呟き。
図書館からも近いこの公園で、借りたばかりの本を2人して夢中で読んだことを思い出す。
春は桜が、夏はカキツバタが、秋は金木犀が、冬はスイセンが咲く、緑豊かな公園。
離れたところには小さな池とジョギングコースもあって、ここを利用する人は多い。
耀たちの遊ぶブランコの側にある鉄棒で、必死になって逆上がりの練習をする男の子。
砂場でお城を作る女の子たちがきゃっきゃっと騒ぎ、その周りでは子供の親たちが世間話をしている。
それらの声を流れるように聞きながら、頭上の桜の木を私は見つめる。
最近暖かくなり、ようやくつぼみが開いて咲き始めた桜に、見下ろされている私。