櫻~再会の願い~
再会
卒業式当日。
ついに私は、いや私たちはこの並木中学を卒業する。
思い出のいっぱい詰まった校舎、教室。
体育館で先生や来賓の方々の話を聞き、各クラスの代表が卒業証書をもらう。
感極まって涙を流す生徒もいた。
私は中学生活最後の合唱の伴奏を担当した。
思い出に浸りたい、そんな想いもあったけれど、櫻のことが頭からずっと離れなかった。
それでも、出来る限りの気持ちを込めて最後の伴奏を終えた。
式が終わり、在校生の作る列を通り抜けてしばらくして、みんながそれぞれのグループで集まって記念写真を撮っている頃。
私は職員室へと向かっていた。
奥の窓側にあるのが、3年生の先生たちの机。
「無理を言ってすみません」
「いえいえ、時近さんと岡谷さんの仲が良かったのはみんな知っていたし、岡谷さんもみんなと一緒に卒業できて喜んでると思うわ」
待っていた担任の三上(みかみ)先生はそう言って、そっと千紗都の卒業証書を手渡してくれた。
それをぎゅっと握りしめて、私は溢れそうになった涙を必死にこらえた。