櫻~再会の願い~
-epilogue-
――10年後
「絢音さーん! どこ行くんですかー!?」
パタパタと走りながらマネージャーの谷口(たにぐち)がそう言った。
「今日は外せない用事があるの。言ってあったでしょ?」
「えっと、ピアノの方でしたっけ? それとも作家の方でしたっけ?」
完全に忘れているらしい谷口に、
「プライベートです!」
ぴしゃりと言い放って、私は目的地へ向かった。
『いらっしゃい』
「櫻さん、お久しぶりです」
そう、私の向かったのは思い出の公園。
足を踏み入れた途端、あの白い世界に包まれ、桜吹雪とともに櫻が姿を現した。
10年前と何一つ変わらない、少女の姿で。
『忙しそうね。噂は聞いてるわよ、美人ピアニストのベストセラー作家さん』
「美人かどうかはさておき、作家活動はほとんど千紗都おかげで…。櫻さんに言われたとおり、夢の中で2人でいろいろ考えて出来た小説なんです」
『千紗都ちゃん、喜んでるでしょ?あの子、あなたに会いたいっていうのの次に、小説家になりたいっていう強い想いがあったんだから』
「ええ、昨日も新作の話をしてくれました。全部、櫻さんのおかげです。あの時、千紗都と再会出来たから今の私があるんです」