会社で恋しちゃダメですか?


会議はいつも通り進んだ。山科は迷うことなく、皆を引っ張って行く。けれど園子は少し気になっていた。


さっきの表情。
どうしたんだろう。


会議終了後、山科は帰ろうとしない。


「部長はまだ残られますか?」
椅子に座って難しい顔をしている山科に、園子は訊ねた。時刻はもう九時半を回っている。


「ああ、ちょっとな」
山科は園子を顔を見ずに、そう答えた。それから「池山さんはもう帰りなよ」と言う。


「わたしも残ります」
「いいよ、遅いから」
「でも」
園子が言いかけると「気にするな」と言った。


園子は少しびっくりする。いつもならもっと柔らかな口調なのに。


山科ははっとして園子を見る。それから「おいで」と声をかけた。園子は山科の側に歩み寄る。


山科が園子をそっと抱き寄せて、膝に座らせる。園子の髪の中に顔を埋めて、しばらく動かない。


「部長?」
「充電完了」
山科がそう言って、園子を離す。


「おつかれさま。また明日」
山科はそのまま仕事へと戻って行った。

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