海賊王女と無敵な人魚の王子さま
「イリスさま!」


 叫んで、助けに来るジーヴルの手をすり抜けて、わたし海に落ちてゆく。


 どこまでも蒼い海に、飲み込まれようとした時だった。


 蒼い甲冑をつけた大柄の副船長と、真紅の長い髪をなびかせた兵士が、見事な弧を描いて海に飛び込んで来るのが見えた。


「ジーヴル……エタンセル……」


 わたしを助けようとしてくれている彼らの名前をつぶやいた途端。


 彼らより一瞬早く、わたしは、ぼしゅっと、背中から海に落ちる。


 血で海に紅い花をぱっと咲かせ、わたしのカラダは、石のように海底へ沈んでく。


 見る見るうちに光さす海面が遠ざかって行ったけど、わたし、特に怖いとは思わなかった。


 だって。


 海の中って、好きだし。


 そして。


 ……海の中でわたしの名を呼んでいる大好きな声が聞こえていたから。


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