腹黒教師の甘い策略
「……なんでよ。」
「は?」
「なんで、言ってくれなかったの?
……7年前に会ってたこと。」
私のその言葉に、谷崎は息を飲み、一瞬だけ驚いた顔をした。
……いつも笑顔を浮かべて、なに考えてるかわからない谷崎。その裏でなにを考えてたの?
長い沈黙の間そんなことを考えていたけど、耐えられなくなった私は話を続けた。
「……赴任してきたときから?それとも聖司の浮気に気づいてから?いつから、思い出してたの?からかってたの?一度合コンで会っただけの女が浮気されてるの見ておかしかったの?……さっきのキスは、なんだったの?」
言いたいこと、聞きたいこと、全部吐き出した。そのあとは谷崎の答えが怖くてずっと俯いたまま。聞きたかったくせに、いざ谷崎を前にすると、答えを聞くのが怖くなった。
「……ふざけんな。」
俯いたままなにも言わなくなった私に、谷崎はぼそっとそう呟いた。
「……いつから思い出してた?そんなの、赴任して、お前を見つけたときからだよ。からかってた?そんな軽い気持ちなら楽だったのにな。」
早口でそう言いはなった谷崎は悲しそうに苦しそうに笑った。
……なに、その顔。
なんて顔してるの。その涙目の意味はなんなの?
混乱する私に、谷崎はまた言葉を続ける。