腹黒教師の甘い策略


「そうだよ。最初はからかうだけのはずだったんだ。お前のそばにいれば、俺も教師としての次の目標が見つかるかもしれない、暇潰しにもなるし一石二鳥だなって。
……でも、いつまでたっても戸川のことを思い出して泣くお前を見て、むかついた。あんなやつのために泣くぐらいなら、俺が原因で泣けばいいって。」


「なに、それ……」


尚も私を抱きしめたまま、耳元でそんなことを言う谷崎。

……なんでそんなこと言うの。その言い方だと、私のこと好きだって言ってるみたい。
ぼそぼそと小さな声で呟くと、谷崎は「みたい、じゃなくて、好きなんだよ。」と、私を抱きしめる腕に力をこめた。

「ま、待って……!だって、さっきのショートカットの女の人は……?彼女じゃないの?」


「だーかーらー、話を聞けって言ったのに、お前が勝手に出ていくから、こんなめんどくさいことになったんだろ。」

はあ、と深くため息をついて、呆れたように言った谷崎。

「……妹だよ。」

「い、妹って、でも、あんまり似てなかったし……!」


つり目がちの谷崎と、くるんと丸くて黒目がちのあの人は全然似てなかった。
そもそも、谷崎とあんな可愛い人が血が繋がってるなんて、

「……お前、俺のことなんだと思ってるんだよ。」

「……性悪男?」

「黙れ。
……母親の再婚でできたやつだから、顔立ちはあんまりにてないし、歳もそこそこ離れてる。」


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