『特別』になりたくて
「遅れたものは仕方ないし、今からでも謝るしかないんじゃ」
「そんなぁ。付き合って初日でこれじゃあ嫌われちゃうよ……」


みるみるうちに表情を暗くする姿が見ていられなくて、「私も一緒に行くから」とそう言おうとした時だった。


「あれ、そこの二人。もうとっくに下校時間過ぎてるけど?」


廊下の方からそんな声が聞こえてくる。
先生かと思ったが、姿を確認すると違うことがすぐに分かって。


「片桐会長……すみません、すぐ帰ります」


声を掛けてくれたのはこの学校の現生徒会長ーー片桐飛鳥。
学年一頭が良くて、先生の信頼も厚い。そんな理想的な生徒会長だ。


「明日から気をつけてね。それじゃあ」


それだけ言って立ち去ろうとした片桐会長の前に待たしても人が来て。


「あ、誰かと思えば飛鳥じゃん。こんなとこで何してんの?」
「……要人、お前こそここで何してる。とっくに下校時刻は過ぎて」
「俺? 俺はーーこの子に用があって」


そう言って、スタスタと教室に入ってきたのは。


「瑞姫みーっけ」
「か、要人くん!?」


例の九條君だった。どうやら瑞姫を探してるうちにこの教室に辿り着いたらしい。


「もう、全然来ないから探しちゃったよ?」
「ご、ごめん。ちょっと話し込んでて」


ぎゅーっと瑞姫に抱きつきながら言う九条君は、何というか女の子に慣れてる感じがした。


「えっと」


この場にいるのが居たたまれなくなるくらい、二人のオーラに気圧されて突っ立っていると。
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