もう、きっと君と恋は始まっていた



崇人は私を見つめると、


『おい仮病人、居留守まで使うなよ』


そう言って、意地悪く微笑んだ。





『てかさ、お前、俺だったから良かったけど。
 来た相手が由樹だったらどうすんの、その格好』


私は崇人の言葉に、ハッと我にかえって、まだ着替えを済ませていないことに再び気付く。






『あ……着替えてくる…!』


私が慌てて、その場を離れようとすると、崇人は私の手を引いた。



『……え!?』

私が素っ頓狂な声をあげたので、崇人は急いで私の手を離した。




『…いや、ごめん……外にいるから』


崇人のその言葉に、着替えが先行してしまい、崇人を中に通すことも忘れていたことに気がつく。




私は手を伸ばして、崇人の手を引いた。


『着替えてくるから、中で待ってて』


私の行動に、言葉に、崇人は困った顔をしながら、それでも中に入ってきた。



リビングに通して、紅茶をカップに注ぎ、テーブルにお菓子と一緒に並べて、それから私は“着替えてくる”とだけ言って、リビングを離れる。


崇人は何も言わなかった。



一人になって、崇人が何故、家まで来たのか…


私はない頭を捻りながら、同時に着替えを済ます。


と、いってもどこかにでかける訳でもないから気軽に着れるものばかりで身を包んでみた。





崇人が一人で家に来た理由…


そんなの本人に聞けばすぐに分かることなんだろうけど。


でも、崇人が発する言葉に私がどう受け答えるかのイメージをしておきたかった。


じゃないと、昨日みたく、泣いてしまう…ということになりかねないから…。





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