もう、きっと君と恋は始まっていた

*6day 由樹が語るもの






『オレンジで良かった?』



ベンチに座っていると、由樹君が近くの自動販売機から缶ジュースを片手に戻ってきた。


そして、一つのオレンジジュースを私に差し出す。




『ありがとう』


私は受け取り、その缶ジュースを握り締める。



今日は、昨日の約束通り、由樹君とみんなでお花見をした公園に来て、昨日話せなかった続きの話をする。




『この間も来て思ったんだけどさ…。
 ここ、空気が美味しくていいよなー』


由樹君はいきなり本題に入ると、私が話しにくいと思ったのか、そんな会話から始めてくれた。




『…うん。
 この間来たときは、由樹君と奈々はなんの話をしてたの?』


私が問いかけると、由樹君はすっごい真面目な顔を見せる。




『別れ話』


たった一言で返すから、私は由樹君を見上げた。




『思い出話もして、楽しかったねーとか言い合って、それで今度こそきちんとこの関係を精算させようって流れになって、それで終わった』




あんなに楽しそうに話してたのに。

あんなに仲がいい雰囲気に見えたのに。



そんな重大な話をしてたなんて…。




『由樹君は……本当にそれでいいの?』


私は、由樹君に聞き返してしまった。




『それでって?』


まさかの由樹君の質問返しに、私はどもってしまう。


再び、由樹君の心に爆弾を落としてしまってもいいものか…





『奈々と別れたこと?』


きっと、戸惑ってる私が分かったのだろう。

彼はそう、聞き返してきた。


私は首を縦に振って、その質問ですと言わんばかりに由樹君を見つめた。




< 51 / 110 >

この作品をシェア

pagetop