もう、きっと君と恋は始まっていた




『なぁ、崇人』


その静かな雰囲気に、声をかけたのは由樹君。




『あぁ?』


由樹君の呼びかけに面倒くさそうに返す、崇人。





『なんで奈々に連絡入れなかったんだよ?』



きっと、由樹君も崇人が奈々に連絡をいれなかった理由を考えていたのかもしれない。


崇人に聞き出し、その疑問を解消させたかったのかもしれない。



由樹君の言葉に、崇人からの返事はない。






しばらくの沈黙が続き、また由樹君が口を開いた。





『なぁ、俺さ、今、どうしても解決したい問題があんだよね。
 崇人、協力してくんね?』




その言葉に、崇人は、“あぁ”と短く返事を出す。




『あるところに仲のいい四人がいました。
 仲のいい四人は、N、C、T、Yの四人組…』


そこまで由樹君が言ったところで、思いっきり心の中で突っ込んでしまった。


Nは奈々、Cは私、Tは崇人、Yは由樹君じゃん…



でも、崇人は何も言わずに、ただ由樹君の話を聞いていた。





『あるとき、四人はそれぞれに恋をしました。
 CはYを、TはNを、そしてYはNを選び、そしてNもYを選んだ。
 でも時間が経つと同時に、NがTと付き合いたいと言った。
 それは、なぜでしょうか?』



私は心の中で、“NがTを好きだった、そして今でも好きだから”と答えた。



でも、崇人は答えない。




『じゃ、選択肢を用意するわ。

 1、NがYにあきたから。
 2、YがCを好きだったから。
 3、NがTを好きだったから。

 はい、三つの中から選んでください』



私は、迷わず、3と答える。



でも、崇人は選択肢を用意されても何も言わなかった。





『崇人、答えてくれなきゃ、俺の疑問が解消しないんだけど?』


由樹君はそう笑って、崇人に言った。



そして、


『用意された選択肢に答えがない、から』


そう、言った。





…選択肢がない……?





『じゃ、どういう答え?』


由樹君は、また崇人に問いかけた。





『CがYを好きだから…』


そう、崇人は答えた。






え…?



CがYを好きだから…?



それって、私が由樹君を好き、だからってこと…?












< 75 / 110 >

この作品をシェア

pagetop