もう、きっと君と恋は始まっていた



階段の踊り場までやってくると、二人はそこで立ち止まって、そして向かい合った。



まさに、告白現場だ。





『もう体調はいいのか?』


崇人が先に話しかけた。




『大丈夫だよ、もう平気』


奈々の明るい声が廊下に響いた。






『それは良かった。
 それでなんの用事?』



崇人の言葉の後に、少し間があって。



『うん、あのさ、あの返事はいつ返ってくるの?』


と、奈々が答えた。







『……返事…うん………』



なんとも歯切れの悪い言葉を発する崇人…。





今だ、今だよ!

ちゃんと自分の気持ちを奈々に




………………




言わないと………












『ごめん』


崇人は、たったの三文字で、奈々に返した。








……え?



どういうこと?




なんで崇人が謝るの?



なんで奈々の告白を断るの?











『うん……。
 だよね、そうだと思ったんだ』



顔はこの位置からだとよくは見えないけれど。


でも、奈々の声のトーンで、奈々がどんな顔をしているのか、想像はつく。







え、なに?



なんで奈々も簡単に受け入れてんの?





なんで?


なんで?







『ごめん……』





『いいよ。
 あの頃も、今も、崇人には知佳だけだもんね?
 あたし、知ってたよ?崇人は知佳のことをあの頃好きだったってことも、今でも想ってるってことも、全部知ってたの、知ってて、それでも気持ちだけは伝えたかった。
 だから、告白をしただけ、だから…』






え?



え?




どういうこと?








『…本当にごめんな』




奈々の言葉を肯定も否定もしない。


だからこそ、崇人がどんなことを思って、断ってしまったのかは分からないけど。






でも、なんで?













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