涙に溺れた教室で
詩奈

私の名前

目が覚めて最初に見えたのは、真っ白な天井。

「ここは・・・どこ?」
知らない声が流れてる・・・?
「あ・・あ」
これが、私の声?知らない・・・!
「私は・・・誰?」

しばらくして、お医者さんから話を聞いた女の人と男の人が入ってきた。
「詩奈。あなたは水原詩奈。」
「みずはら・・・しいな?」
「私は、あなたのお母さん。そしてこの人があなたのお父さんよ。」
「お母さん、お父さん」
この人が?とても優しそう。
「生活に支障はないようだから、心配しないで。来週には退院できるわ。」
「・・・」
怖い。私のことが分からない。
「あの、お、お母さん。私は、どうして記憶がないの?」
「・・・詩奈は、事故に遭ったのよ。学校の写生行事にいく時に・・・バスが衝突して・・・横転して」
「・・・学校?他の子もいたの?」
「中学3年生。他の子もいたわ。」
「他の子は無事なの?」
「・・・も、もちろんよ。怪我した子はいるけど無事よ・・・」
私だけ、記憶が?不公平な気がする。

思い出したい。でも、思い出そうとすると頭が痛くなる。思い出したくないことが、あったのかーーー。考えるのをやめた。

二週間後。もう退院して、家で過ごし始めた。
「ねえ、詩奈。もう家での生活にも慣れてきたことだし・・・そろそろ中学校に行かない?」
「中学校・・・」
行くのが怖かった。記憶に関わりたくなくて。

でもーーー勇気だそう。私が誰なのか。知りたいーーー!
「行くーーー!」
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