ずっと隣で・・・
「千鶴」
後ろから名前を呼ぶ声にファイルを取る手が止まる。私の名を呼んでいるのは
2週間前に別れた英斗の声だった。
「・・・・」
私は聞こえないふりをして再びファイルを取ろうと背延びした。
すると・・取ろうとしているファイルを英斗が取った。
返してもらうにはどうしても振り向かなきゃならない。
でも正直顔も見たくない。
「何でしょう。そのファイル返してもらえませんか?」
私は振り向きもせず手だけを後ろに伸ばした。
だが返してくれるわけ…なかった。
「ちゃんとこっちを向いてくれたら渡すよ」
多分私が振り向かなきゃずっとこのままだと思い仕方なく
英斗の方へ向きを変えた。
「必要な書類です。返してください。」


「俺は別れたつもりなんて…ないよ」
思いもよらぬ言葉に目が点になった。
は?別れたつもりないって・・・
どこか頭でも打ったの?
「私はもう篠原君を彼氏なんて思ってません。ファイル返して」
ファイルを取ろうとするがファイルを持った手はひょいと上にあげられてしまう。
「篠原君って・・・お前・・そんなに怒るなよ。あれは・・・」
「あれは?・・・何なのよ」
「あれは・・・妹だったんだ。」
何処まで馬鹿にしてんの?この男は・・・何が妹よ
あんたには妹じゃなく弟しかいないはず。
反論するのもバカバカしくって私は、資料の乗った台車に手をかけた
「その資料ほしかったら持ってけば?もうあんたの顔見たくもないし」
「お・・おい!千鶴!待てよ。俺は・・」
私は、資料室のドアの前で一旦止まると
「私を見くびらないで!あの時、一度でも私の事を心配してくれた?
電話もメールも何もなかった。
しかも、門前払いだった・・・
その態度であなたへの思いが一気に冷めたのよ。
だからもう・・・私に近づかないで」
そして資料室のドアを思いっきり閉めた。


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