キミじゃなきゃダメなんだ


けれど、やがて拍手が鳴り始める。

被害者の女性は瞳に涙を溜めて、私とイケメンさんに、しきりにお礼を言った。


車内が一気に拍手に包まれて、なんだか照れてくる。

里菜とチョコちゃんは『またか』という顔をして、苦笑いだった。


うはは、痴漢野郎を撃退した。やったぜ。


ふと頭を上げると、イケメンさんと視線がぶつかる。

うひゃー、綺麗な顔!

彼は私を見つめたまま、「ねえ」と言った。



「...本当に、録画したの?」

「え?もちろん嘘ですけど」

「....」



当たり前じゃないか。

私にそんなとっさの知恵があったら、もっと頭のいい高校に行ってるよ。

少なくとも、取り柄が元気なところしかないような、そんな人間にはなっていない。


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