天然王子
 

でも、もし田熊が彼氏だったら…


『本当にバカだなぁ、春香は♪』

『もうっバカバカ言わないで!!』

『あはははっ…うそだよ、春香はかわいいなぁ』

『もー悠弥ったら、そんなこと言ったって何も出ないゾ☆』


………だめだ、想像できない。

つかありえない、何さ『ゾ☆』って…

自分で想像しておいて自分で気持ち悪くなってしまった。

そんな時、佐竹のケータイが震えた。


「あ、彼女から電話だっ♪」


佐竹は嬉しそうに教室のすみに行って彼女と電話をしていた。

きっとここに紗和いたら、間違いなく佐竹のケータイ折ってたな…

今は紗和がいなくて良かったと思った…


「あ、お前に後で話あんだけど…」


何かを思い出したように田熊が小声で言った。

後で?


「今じゃだめなの?」

「バーカ、あいつに聞かれたらめんどくさいことになんだよ」


田熊はそう言って佐竹の方を見た。

心配しなくても佐竹は彼女の電話に夢中だから大丈夫だと思うけど…


「わかった」

「じゃ、帰り靴箱んとこいて。
俺、掃除だから」


田熊は自分勝手に場所を決めてどっかに行ってしまった。


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