君が居た頃。
プロローグ

毎年、思うんだけどさ。


歳をとる度に
年々、誕生日を祝ってくれる人が
増えている気がする。

それは、俺が歌手として
順調に成長している証拠なのかな。

今日届いたファンレターには、
残さず返事を書いてみよう。










しばらくの間、
誰も足を踏入れていない部屋。


この部屋を訪れたのは4年ぶり。
かつて愛を誓い合った人の部屋。



ねぇ…。


あなたは、今
どんな笑顔で笑っていますか?



もし、笑えていなければ
その笑顔を曇らせたのは、
俺なのかもしれない。

何故か、そう思った。






半開きの引き出しから出てきたのは、
1冊の日記帳。



突然のことに、少し驚く。
きっと、君の書いたものだ。

読む勇気がなくて
なんとなく表紙を眺めていると、
カーテンと遊んでいた風が、
そっと表紙をめくった。


まるで、導かれてるみたいだな。


…………………………………………………………………………
7月 20日 晴れ
…………………………………………………………………………


それが日記の始まりだ。

すぐに気づいた。
4年前、俺らが出会った日だろう、と。

そして、すいこまれるように
彼女の字に見いった。


……………瞼の裏に、蘇る。


全てが始まり、そして壊れた。
4年前のあの夏のこと……__。







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