残念御曹司の恋
翌日から私はずっと計画していたことをすこしずつ実行していった。

本当は彼をホテルで見かけた日から、こそこそと準備をしていた。

だから、あとは思い切りよく幕を引くだけだ。


あの日。
ホテルのロビーで彼と彼女の幸せそうな姿を見たとき。
私の中に今までにないくらい激しい感情が生まれた。
それは、紛れもなく嫉妬心だった。

彼から、一刻も早く離れなくては。
私が出した結論はそれで。

近くにいては、忘れられないばかりか、その苦しさに耐えられそうにない気がした。
あれだけ、大丈夫だと言ったのに、結局私は逃げ出すのだ。


唯一、全てを打ち明けた妹には、「本当にお姉ちゃんは馬鹿だ」と言われた。


本当にその通りだと思う。

でも、この10年が無駄だったとは、全く思わない。

むしろ、私にとっては、人生の中で最高に愛おしい時間で、幸せな記憶だった。

人生に正解などないように、恋の終わりにも正解はない。
でも、これでよかったと心から思う。

新幹線が発車してすぐに、ビルの谷間に、クマザワの本社ビルがちらりと見えた。



願わくば。

彼の人生が華々しく、幸せに満ちたものでありますように。


離れていく街の空に向けて、そっと祈った。
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