残念御曹司の恋

「イケメン御曹司がある日突然、さえないOLと出会い恋に落ちて…」

その男は、先ほどからホテルのベッドに寝そべりながら、ぶつぶつとしゃべり続ける。

「仕事も私生活も完璧な彼は、ピンチには必ず颯爽と登場して主人公を守り、一途な愛を囁く…」

手には、ピンクを基調とした可愛らしい表紙の文庫本。

「…って、何だよ、これ。」

男は、「最高にくだらない」とでも言いたげな様子で、その本を私に差し返してきた。

「だから、女子の頭の中にある御曹司のイメージはこれなのよ。」

私はシャワーの後、バスローブを羽織っただけの体でベッドの端に腰掛け、その本を受け取った。

「まさか司紗(つかさ)の妹がケータイ小説書いて生計を立てているとは…」

「まだ、主な収入源はコンビニのバイトのようだけど。」

ピンクの表紙には、「御曹司は突然に」という“いかにも“なタイトル。
作者は、片霧 紫苑(かたぎりしおん)。私の実妹のペンネームだ。
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