残念御曹司の恋
その日から思い当たる先には全て連絡した。

高校の同級生、司紗が行きつけにしていた店、知り合いという知り合いを辿って少しでも司紗と接点がある人間には片っ端から彼女の消息を尋ねる。
でも、誰も司紗の連絡先を知る人間はいなかった。

同時に、彼女の自宅を訪ねた。
司紗の母親からは、彼女が自宅を出ていったことと、連絡先は誰にも教えないように言われていることを聞いた。
母親も、引っ越した理由や仕事を辞めた事情は知らないようだった。
俺に連絡するように伝えてほしいと何度も頼んだ。

だけど、司紗からの連絡は一向にない。

手詰まり…か。

もはや、俺が彼女を捜し出す術は残っていない。
焦りと諦めが俺の心を静かに蝕んでいく。
平気な振りをして仕事をしていても、時々どうしようもなく苛立ち、それを隠すようにまた仕事を詰め込んだ。
あれだけ落ちなかった体の余分な脂肪も、ハードな日々のおかげですっかり消えていた。

詰め込んだ仕事の合間、彼女の家を訪ねる。
何度断られても、俺は頭を下げるつもりだった。

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