残念御曹司の恋

「あ、今日は餃子の番か。」

家に帰って来るなり、冷蔵庫を開けてよく冷えたビールを取り出しながら、恋人の修司が言った。

彼の目の前にずらりと並んでいるのは、私がバイト後からせっせと包んだ餃子100個で。
私はフライパンを熱して彼らを焼く準備をしているところだ。

「週半ばの水曜に餃子とか、お前なかなかのチャレンジャーだな。」

「私は明日、バイト休みだから。」

「朝からニンニクの臭いプンプンさせて、俺は明日も営業に出るわけだが?」

医療機器メーカーで営業をしている彼の訪問先は病院である。
清潔な消毒薬の匂いがする院内に、ニンニク臭い営業マンが入ってきた時の周りの反応を思い浮かべて、思わず笑いがこみ上げる。

「嫌なら食べなくてもいいよ。」

「いや、絶対食う。紫里の餃子うまいから。」

ちなみに、私は何も彼に意地悪をしている訳ではない。
私がまともに作れる料理が餃子と、唐揚げの二種類しかないから、仕方がないのだ。
彼の家に来ては、その二つを交互に作っている。
今日がたまたま‘’餃子の番‘’だっただけだ。

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