極甘上司に愛されてます


「……あの人にも色々あるみたいだ」

「色々って?」


興味本位で尋ねてみたけど、編集長はそれ以上教えてくれる気はないみたいで。


「……それは俺の口からは言えない。本人に聞いてみたらどうだ?」

「き、聞けませんよ怖くて!」

「はは、だろうな」


笑ってるけど、結局教えてくれないんだ。……男同士の秘密ってやつ?

でもまぁ、私たちのことを認めてくれたのは確かみたいだから、そこまで深く問い詰める必要もないのかな。


とりあえずは納得すると、ふと編集長はどこに向かって歩いているんだろうと言う疑問が湧いた。

傘を持っているのは編集長だから、主導権は彼にある。

とりあえず、私の家の方向ではあるみたいだけど……

聞こうかどうしようか迷って、彼の端正な横顔を見つめる。

ううん……やっぱり、カッコいいな。

そういえば、彼とキスをするとき、あの髭が意外と当たらないんだよね……
そういう角度とかテクを熟知してるんだろうか。

大人だもんね……元カノはあんなに美人な留美さんだし。


……留美さん、といえば。私、彼女と何か約束をしていたような……


「……ん? どうした?」


私の視線に気づいて振り向いた編集長の目が見れず、ぶんぶん首を振って濡れた地面に視線を落とす。


「な、なんでもないです……!」


お、思い出した……。よりによって、かなり至近距離に編集長がいるタイミングで。

仲直りエ……いやいや、考えるな! 変に意識してしまう……!


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