俺様富豪と甘く危険な恋
前後、走っている車は見えない。

そこへ蓮の運転するポルシェのスピードが上がり、栞南の身体が重力で蓮の方へ傾く。

プロのレーサーみたいに巧みなドライビングテクニックを持っているからこそ、カーブでもスピードをさほど落とさずに曲がれる。

蓮を信頼はしているが、栞南は怖くなる。


(どうして追われているみたいに走るの?)


「カーブ道なのに危ないですよ!?」

「奴らが追ってきている。怖かったら目をつぶっていろ」


巧みなハンドルさばきとアクセル、ブレーキの流れるような一連の動作を続ける蓮だ。


「ええっ? 追ってきてるって!?」


栞南が後ろを見ると、ヘッドライトがものすごい速さで近づいてくるのがわかり背筋が凍りつく。

重苦しいキキーっとタイヤを鳴らしながら、複数のブレーキ音。

栞南は人形のように左右に揺られ、眩暈を感じてきた。胃からせり上がってくる感覚も。

吐き気は運転の荒さじゃなく、恐怖から来るものだ。

カーブでは引き離すが、直線道路ではぐんぐん車が近づいてくる。それが何度もあり、栞南は違和感を持った。

でも、身の危険を感じている栞南にはそれがなんだかわからない。

恐怖と戦う時間だ。

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