俺様富豪と甘く危険な恋
真夜中、栞南は腕の痛みで目が覚めた。一瞬どこかわからなかったが、すぐにタワーマンションの部屋だとわかった。

ずきずきと痛む腕。

病院で処方された痛み止めが切れたようだ。

部屋はベッドサイドのダウンライトが点けられており、やや明るい。

薬はどこにあるのだろうと、頭をめぐらせると少し離れたところでイスに座る蓮が眠っていた。

腕と足を組み、頭は天井に向けられている。

栞南は驚いて上体を起こす。

高い鼻梁、眉はキリッと美しく、少し薄めの唇はほんの少し開かれていてセクシーだ。

眠っていても絵になる人っているんだと、栞南は見とれてしまう。

大変な思いをしたけれど、意外と精神は大丈夫。

この約2週間の間は映画のような出来事が自分の身に起こって強くなったみたいだ。

あれくらい本田にピストルを向けられた時ほど怖くない。


(あの時だって、朝日奈さんがそばに居てくれたからなんとか頑張れた。失神しちゃったけれど)


栞南は床に足をつけて蓮のそばへ近づく。


「朝日奈さん、朝日奈さん」


軽く肩を揺さぶると蓮の瞼が眠そうに開いた。


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