俺様富豪と甘く危険な恋
「これを私に……?」

「踏みつけられて数十本はダメになってしまいましたが、そのまま放置しておくのも可哀想なので私が拾ったんですよ。他にもチョコレートケーキがありましたが、あれはリーに踏みつけられてぐしゃぐしゃに」

「ダニエル、お前なにをペラペラしゃべってるんだ」


いつになく饒舌なダニエルに蓮は切れ長の目でにらむ。


「レンさま、彼女はちゃんと言わないとわからないタイプですよ。ほら、感激しているではないですか」


ダニエルは栞南の様子を見て薄く笑う。

ダニエルの言う通り、栞南は真紅のバラから目を離せずにいた。その瞳は潤んでいる。


「朝日奈さん……ありがとうございます。でも私、ダメになってしまった1本でもプレゼントされればうれしいです。私を想って買ってくれたお花だから」


今まで花を贈られたことがない栞南。好きな人からもらえるのなら、1本でもいい。


「栞南……」

「女ですから、きれいな服もうれしいけど、その……贈る時の気持ちが……大事で……」


服を買ってもらったときは自分に対しての蓮の気持ちがわからなかった。でも今は蓮の気持ちが伝わってきて栞南は泣きそうだった。

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