俺様富豪と甘く危険な恋
「それは……デート?」

「ああ。ボディーガードもいない。俺たちだけだ」

「うれしいです。行きたいところはたくさんあります。あ……でも、傷に障ってしまうんじゃ……」


蓮と出かけたいが、身体の方が心配だ。


「傷は大丈夫だ。気にするなと、何度言ったらわかるんだ?」

「そんな……気にするに決まっているじゃないですか。好きな人のことなのに……」


ポロッと言ってしまってから栞南は我に返る。


「今日は直球だな」

「……直球でも変化球でも日本に帰るまでたくさん話しますからね」


(そうよ。一緒にいられる時間は少ないんだから)


「俺はいつまでもお前を腕に抱いていたい」


隣から腕が伸びて引き寄せられようとするところを栞南は止める。


「ちょ、ちょっと待ってください」

「すぐ止めるなよ。傷つくだろ」

「だから傷に障ります」


そこで栞南はくすっと笑みを漏らす。


「もうっ、お料理が冷めちゃいますよ。食べましょう」


今日の夕食は上海料理だ。時期が少し外れた上海ガニを本場上海から取り寄せた贅沢な料理。

栞南は蒸しあがった上海ガニに手を伸ばす。

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