俺様富豪と甘く危険な恋
「また来たいな。次は絶対にヴィクトリア・ピークに行って100万ドルの夜景を見てやるんだからっ」


窓から見えるビル群に向かって言うと、栞南は振り返りベッドの上の大きめのバッグを肩から斜め掛けし、右手にピンク色のスーツケースを引き部屋を出た。

エレベーターホールでエレベーターの到着を待つ間、栞南は腕時計を見て時間を確かめる。

実は、栞南は香港へ一緒に来た人がいる。

大学の時の友人、星野彩(ホシノアヤ)だ。

彼女に誘われ、栞南は香港へ来たのだ。と言っても、行動は別。彼女は香港で働く日本人の恋人、本田雄二(ホンダユウジ)と過ごす目的があった。

台湾、グアム、ハワイと、3度ほど海外旅行の経験がある栞南は旅行に必要な英会話ならなんとか出来るので、到着後ひとりの行動でも問題なかった。

誘ってくれた彩は大学の時の同じ学部の友人だが、思い返してみれば数回カフェやカラオケに行ったくらいの仲。

同窓会でお酒が入り、久しぶりに会った彼女に栞南は自分の悩みをペラペラ話していた。

つい1ヶ月前に9ヶ月間付き合った彼と別れ、同じ会社で働いている元カレのせいで居心地が悪いと話をしていた。

香港行きが決まった話の発端は思い出せないが、一緒に行く約束をしていた。

翌日、自分の部屋で目が覚めると、香港旅行で話が盛り上がったのをはっきり覚えていた。

気持ちを整理するために香港旅行は最適に思えた。

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