俺様富豪と甘く危険な恋
順番に下車する中、栞南は蓮に手を引かれピークトラムを降りた。蓮に導かれて先を進むと、ふいに栞南の目に香港を代表する美しい夜景が広がった。


「すごいー! なんてきれいなの!」

「今日は晴れているから、わりとキレイに見えるな。曇りや雨の日はほとんど見えずにがっかりするぞ」

「これが100万ドルの夜景なんですね!」


ビル群の灯りが眼下に広がり栞南はうっとりとため息を漏らす。


「いや、昔はそう言われていたが、今は70万ドルにもならないと言われている」

「初めて見る私には十分100万ドルの夜景に見えます。本当にステキな景色です」


栞南はスマホに夜景をおさめるが、画面を通して見てみるとあまりキレイに映っていない。


「やっぱりスマホじゃだめですね。一眼レフだったらキレイに撮れるのに……」

「また来ればいい。いつでも付き合うぞ」

「それって本当ですか? いつでも来たいときに付き合ってくれるんですか?」

「ああ。他の男と来させるほど器は広くない」


夜景のせいなのか、いつもより甘く見つめられて栞南は次の言葉が出てこない。

夜景と同じように吸い込まれそうな瞳。

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