俺様富豪と甘く危険な恋
トランクからスーツケースを2つ出したハイヤーの運転手は丁寧にお辞儀をして去って行った。

カギを開けて部屋に入ると、電池が切れたロボットのようにその場にペタンと座り込む。


「帰ってきちゃった……」


ぐるっと自分の部屋を見るとここは香港じゃないと、実感する。

こうしてみると香港の出来事は夢のような気がしてくる。

長い長い夢……。

でも、喉もとに光るブルーダイヤが現実だったと教えてくれる。


「明日から仕事! レンに会うためにも頑張らなきゃ!」


ペンダントヘッドに触れながら自分に喝を入れる。

朝日奈蓮は極上のオトコ。彼の隣にいて恥ずかしくないような女性になりたい。



翌日、栞南は朝から緊張していた。半月も休んでしまった会社へ行くのは勇気がいる。

港区にあるオフィスが入っているビルに入り、受付カウンターを通ってエレベーターホールでエレベーターを待っていた。


「水野さん!」


背後から声をかけられ、振り返ると二股男、引地孝太郎が立っていた。

孝太郎は栞南の隣に並ぶと、心配そうな顔つきで見る。

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