俺様富豪と甘く危険な恋
「不自由だから不自由と言ったんだ。俺は助けがなければ生活できないんだ。そんな男と一緒のいることはないだろう?」


蓮は栞南の声のする方向に視線を向ける。それが果たしてちゃんと栞南を見ているようになっているかはわからない。そう考えると、蓮の顔がゆがむ。

時々、どうにも出来ない苛立ちで叫びたくなる。今がそれだった。しかし、愛している栞南に弱い自分は見られたくない。


「私は蓮を愛している！　別れるなんて出来ないよ！」

「栞南！　今の気持ちは時間と共に消えていく」


栞南は蓮の端正な顔をじっと見ていた。ケガや失明したことなんてまったくわからない、別れた時のままの蓮だ。しいて言えば、少し痩せたように見える。でもそれでも蓮の魅力は損なわれていない。


「レンは……レンは、もう私を好きじゃなくなったの？」


偽りの恋人としてソフィアを呼んだ蓮にまだ恋人はいないはずだと栞南は考えている。


「……ああ」

「そんなのウソっ！　さっき手にコーヒーがかかった時も心配そうに大丈夫かって聞いてくれたじゃない！」

「そういう時には誰でも聞くだろう？」


蓮は心を閉ざしてしまったのか、それとも自分のためを思ってわざと言っているのか。

栞南は蓮の表情を見ながら、頭を目まぐるしく働かせる。




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