俺様富豪と甘く危険な恋
栞南は唇に何かが触れた感触に目を開けた。

スイートルームのベッドにさんさんと太陽の光が入り込んでいて、栞南はまぶしさに何度か瞬きする。

隣で片肘を付いて自分を見ている蓮に微笑む。


「もう起きていたの?」


空が白むまで記憶がある。寝たのはほんの2、3時間と言ったところだろう。


「ああ。おはよう」

「まだ眠い……」


栞南の瞼が再び降りようとしている。あくびをする口元を左手で隠す。そこで目がパチリを開いた。

目の前に見覚えのある宝石があった。


「これ……」


左手の薬指にブルー色をした宝石が陽光に当たり輝いていた。形はしずく型で、リングの部分にはダイヤが施されている。


「残念ながらブルーダイヤじゃない。サファイアだ。あれを贈っても良かったが、気軽に身につけられないのもと思ってな。それに、また命を狙われたら困る」

「よかった……あれを身に着けたら命狙われちゃう」


栞南は自分の左手に光るサファイアを眺める。


「あの石のおかげで俺はお前に出会えたから、とてつもない大金を積まれてもあれを手放すつもりは今後もないが」


栞南が彩に誘われ、香港へ来なかったら?

蓮がブルーダイヤを盗まれていなかったら?


すべてあのブルーダイヤがふたりをめぐり合わせてくれた。


「レン……ありがとう」

「まだ聞いていないことがあるんだが」

「聞いていないこと?」


栞南はずり落ちそうなシーツを胸もとでしっかり押さえながら首を傾げてみる。


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