俺様富豪と甘く危険な恋
「……ま、お前がそうしたいのなら引き止めないが。奴らを捕まえるよう香港警察と日本の警察に依頼している。領事館はお前を引き取るだろうが、ホテルの部屋で軟禁状態だろうな」

「ホテルの部屋で軟禁状態って、どういうことですか?」


思いがけない言葉に栞南は身を乗り出すと、蓮はトーストを置き布ナプキンで丁寧に口を拭く。


(育ちの良さがにじみ出ている……)


「今月半ばに総理の中国外遊が決まっている。ここもスケジュールに組み込まれている。今の領事館は受け入れ態勢を整える仕事に追われているぞ。そんなところへ行っても、ほぼ関知しないだろう。お前は総理がここを発つまで後回しにされ、与えられたホテルの1室で軟禁されることになる。ボディーガードも付かずにな。奴らの狙いたい放題だ」


蓮の言い分は正当のような気がするが、そんなことはないと、期待する気持ちもある。


「でもここに居ても軟禁状態は一緒でしょう?」

「お前には優秀なボディーガードが付いている」

「ゆ、優秀なボディーガードって朝日奈さんのことですか?」


確かに危険で妖しい雰囲気はあるが、気品もあっていざという時、命を懸けてまで戦ってくれそうには見えない。見た目が危険な男だから、一流のスナイパーと言われても頷いてしまうだろうけど。



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