俺様富豪と甘く危険な恋
「ほら」


イスからカーディガンを手にした蓮は遠い目になった栞南に放り投げた。

ハッと我に返った栞南は素早くカーディガンを羽織り、上から4番目までボタンを留める。


「パソコンが欲しいと聞いたが?」

「欲しいんじゃなくて、借りたいんです」

「たいした違いはないだろ」


蓮の口の端が楽しげに上がる。


「違い、大いにあります! ただ借りるだけです」


ふと蓮の視線が下へ動き手を伸ばして、ゴミ箱からミステリー小説を拾う。


「読み終わったのか? まだ新品のように見えるが」

「読みたくなくなったんです」


蓮はパラパラとページをめくっている。


「面白そうじゃないか。俺がもらっておく。日本の小説は久しぶりだ」

「どうぞお読みください」


有名なベストセラー作家だから蓮の興味を引いたのだろう。


「パソコンは明日用意する」

「ありがとうございます。それから……何か進展がありましたか?」

「星野彩と日本からの電話が数えきれないくらい入っているが、今のところ進展はない」


蓮は切れ長の目を一瞬曇らせた。

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