俺様富豪と甘く危険な恋
栞南は1メートルほどの腰の高さまでの石塀に近寄り、周辺をぐるっと見渡した。

少し冷静さが戻ってきて周りを見る余裕が出てきた。

海がすぐ近くにあり、天后廟の極彩色で彩られた福の神が少しだけ見える。


(ここにいる間に行けたらい――!)


「うっ!」


突然、後ろから羽交い絞めをされ呼吸が止まる。

口を黒革の手袋をはめた手で塞がれたとき――


ガッ! ドサッ!


乱暴に男が栞南から引き離された。

身体が自由になり、栞南はその場に崩れるように倒れる。地面にペタンと座り込み、今頃になってガタガタと震えてくる身体を両手で抱きしめる。

栞南を襲った男はボディーガードたちに殴られ、目の前で地面に抑え込まれていた。

ふいに肩に手が置かれ、栞南の身体がビクッと跳ねる。


「大丈夫ですか? ケガは? 怖い目に遭わせてしまいすみませんでした」


トニーは片膝をつき、栞南と同じ目線になったが、すぐに立たせられる。


「この人は……宝石を盗んだ……人……?」


胃がムカムカして吐き気がこみ上げてくる。

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