NEWMOON〜君と僕の逢瀬〜

天神様の夏祭り。
ここの雰囲気は苦手だった。
鳥居の上で彼らは酒盛りをしている。
よく太った男とハゲていてしかも長い頭の男と、琵琶でひたすら何かの音楽を奏でている女。
彼らの中の一人と目が合う。

「おお、チビ。今年も来たか」
「お前ももう少し大きかったらなあ、ワシらと酒を飲めたんじゃがな」
「いや、ワシらのことは今の時代じゃ誰も見えん。この子だけじゃ」

他人のふりをしても、彼らは見えている人がわかってしまうので、問答無用でかまってくる。

「お前の時代ではいつが元服だ?早くお前と酒が飲みてえ」
「待てや。今の人は元服じゃねえ。社会人だろう」
「時代も変わったのお」
かんらかんらと彼らは笑う。

彼らは昔、豊穣の神と呼ばれていた人達だ。
だが、近代化が進み自然と忘れ去られ、見える人も減っていった。

僕たちを除いて。
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