アイスクリームの美味しい食し方
「チカ、こっち向いて。」
腰に手を回し、
私を引き寄せる。

周りの女子たちが騒ぎたてている。
教室の入り口で
昼休みバイバイするカップルの様子を
カワウソの赤ちゃん並みのギャラリーが
見ている。

私はたまらず顔を背けた。

それをいいことに、
両手を腰に巻きつけ、
廊下の壁にもたれた。

重力で、彼に余計に引き寄せられる。
まるで私からもたれたように
見えるじゃないかっ!

耳元に軽く唇をつけて、
甘く囁く。

「みんなの前で、
キスしちゃおっか。
つか俺がしたい。」

な、な、な、な、な、な、な、



なにーーーーー!!


私は顔を真っ赤にして、
小声で言った。



「や、やりすぎ!
やりすぎです!」
私は涙を浮かべて抵抗した。

クスクスと笑い、
耳元で話した。
「風紀委員なので、
風紀を乱すことができませんね。

ただ、君のその顔、
たまらなく可愛いな。」


ぞくっ!
冷たい笑顔が私を刺す。

こいつの可愛いは、
なんか違う。

人の苦痛を喜ぶような…
楽しむような…。


そして、
授業が開始されるまで、
ずっと甘い言葉を囁かれ、
身体を密着させられ、
背中や腰なんかも触られ続けた。

十分、風紀を乱してるっつうの!!

私は、人生の半分以上の鼓動を
一気に消費した気がした。


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