アイスクリームの美味しい食し方
シャワーを借りて、
保健室で少し休むことにした。

次の休み時間が来る前に
学校を出なきゃ。

そう思っていたのに、
私はぐっすり眠ってしまった。


「ごめんな。」
私の手を取って謝る
佐々 新が見えた。

夢?


「俺が悪かったんです。
君を守ると誓ったのに
君を1人にしてしまった。」

泣いてるの?

こんなことで?


「鞄の中に昨日のハンバーグがあるの。」

私は夢の中だから、
素直に言えそうな気がした。


「久振りに誰かの為に料理したんだ。

あんたに食べてもらえなくて
さみしかった。」


「うん。」

佐々 新は、お弁当を開いた。


「食べて。」
私は涙がこぼれるのを我慢した。

佐々 新は、
お箸を取り出して、
ハンバーグを口に運んだ。

「…っ。おいしいです。」

よかった。



嬉しい。




ありがとう。




私、生きてゆけそうな気がするよ。


拾ってもらって、
世話してもらって、
ハンバーグ
食べてもらえた。


まだまだ私の人生捨てたもんじゃないな。



よかった。
私、まだいいことがあるかもしれないって
思える。


「私ね。
店長見たときにね、
お父さんってこんな感じなのかなって
思ったんだ。

色目を使ったわけじゃないんだよ?」


「ごめん。分かった。分かったから。」
新は泣きながら私の頭を撫でた。

「つぐみさんに抱きつかれて嬉しかったのは、
私、ずっとさみしかったからなんだ。


誰かにずっと受け入れられたかったんだ。

子どもでしょう?」

「うん。」

私は伝えたかった言葉を
吐き出せて、
嬉しかった。




ねぇ、佐々 新。

「ありがとう。」

もう十分だ。



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