キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~


「……良いですよ、遠恋でも」


勇気を出して、店長の背中に手を回す。

すると、店長は顔を離し、私の目をのぞきこむ。


「無理してないか」

「そりゃあ、本当は嫌ですよ。本当は、普通のカレカノみたいに、週末お泊まりしたり、デートしたり、仕事帰りに会ったり、したいです」


頭の中に、妄想の花が咲く。

でもそれは、遠恋と言う名の豪雨で、あっさり枯れてしまう。


「店長がいないと、寂しいです」


たまらず抱きつくと、店長の手も私の背中に回り、ギュッと引き寄せてくれた。


「でも、別れちゃうのは嫌です。私、がんばります。だから」


ほのかに煙草のにおいが残るスーツに顔をうずめたら、涙が出そうになった。

けど、残り僅かな勇気をふりしぼる。


「一緒にいられるうちに、いっぱい可愛がってくださ……」


言い終わらないうちに、声が出なくなった。

矢崎店長が、まるで噛みつくみたいに私の唇をふさいだから。


説教と嫌味しか言わなかった唇は、もしかしたら冷たいのかもと思ってた。

けどそれは想像以上に熱くて、たちまち私を溶けかけのチョコレートみたいにふにゃふにゃにしていく。


立っていられなくなりそうで、私は必死で店長にしがみついた。


「……ああ、帰したくねえ……」


唇を離した店長も、私を両手で力いっぱい拘束する。


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