キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~


「うん。今日、地区内の他の店の同期から電話がかかってきて、そんなことをちらっと聞いた」


気まずい空気が流れる。


「はっちゃん、どっかご飯に行こうよ。俺、家がこの近くでさ」


慰めるような長井くんの優しい言葉が、痛かった。

思わず涙がにじんでしまう。


「行こうかな」

「今夜は飲んじゃおうよ」

「うん」

「何でも聞くからさ」

「うん……」


長井くんに背中を押されるまま、ゆっくりと歩き出す。

卑怯だとは思っていても、彼の優しさに寄りかからずにいられない。


本当は、違うのに。

迎えにきてほしかったのは、誰でもない、俊。あなただったのに。




15分ほど歩くと、朝はひっそりとしていた駅前が、飲み屋の看板で華やいでいた。

長井くんはそんな中でも、居酒屋チェーンではなく、半地下にあるオシャレなお店に連れていってくれた。

小さなプレートに書かれた店名は英語で、読めないけど。

中は薄暗いけど、居酒屋のように騒がしくなく、バーテンがいるカウンターの他に、個室もあるようだった。


「実はここ、俺の友達がいるんだ」

「へえ。素敵なお店」


< 137 / 229 >

この作品をシェア

pagetop