キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
「勝ちとか負けじゃない。突然だったから驚いてはいるけど……」
「もういい。そんな弱気な俊なんて、見たくない」
「初芽」
「簡単に諦めちゃう俊なんか、嫌い!」
私は俊を突き飛ばすと、寮から出ていく。
そのあとを俊が追ってくる気配は……なかった。
何もせずに他人のいうことを聞くだけなんて、俊らしくない。
突然だったから驚いてる?ショックを受けて、何もできないっていうの?でもそれは、私だって一緒だ。
「どうしたの、はっちゃん」
長井くんが一階に降りてきた私の顔を見て、心配そうにたずねる。
「困ったことになったの」
私は、今あったことを長井くんに話す。
「ええっ?そんなことが?」
「というわけで、店長は謹慎、私もすぐに元の地区に異動することになっちゃったの」
「なんていうか……波乱万丈だね」
長井くんは呆れたようなため息をつく。
私だって、こう次から次へと色々なことがあるとは思ってなかったよ。
「で、店長は、今回は潔くあきらめる、と。あの人らしくないね」
「でしょ?私、もう悔しくて。喧嘩して降りてきちゃった」
「はあ……」
ああいうふうに言えば、負けず嫌いな俊はきっと自分でこの状況をなんとかしようと思うはずだ。
けれど、閉店してから家に着いても、俊からの連絡はなかった。
たまりかねて自分から電話をかけても繋がらず、留守番電話になってしまった。