キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~


『謹慎の場所を変える。迷惑をかけて申し訳ない 矢崎』


謹慎の場所を変える?ということは、俊はこの寮から出ていってしまったということ?


「寮から退居するように、命令があったのかも」


長井くんがぼそりと言う。

そうか。寮で不祥事を起こしたから、会社から退居するように言われたのかも。

だとしたら、今どこにいるの?

実家は福井。一晩で引越しできるような場所じゃない。

じゃあ、近くのホテルにでも泊まっているの?


「はっちゃん、店長から何か連絡は……」


言われてバッグを探る。

スマホのロックを解除するけど、着信もメールもなかった。

どうして?なんで、何も言わずにいなくなってしまったの?

こんな書置き一つで……。


俊の神経質な綺麗な字を見たら、涙が溢れた。


どうして、もっと優しい言葉をかけてあげなかったんだろう。

嫌いだなんて、どうして言ってしまったんだろう。

降格かもしれないなんて、一番ショックを受けたのは、間違いなく俊だったのに。

私は、何があってもそばにいて、俊を支えてあげなきゃいけなかったのに……。


どんなに後悔しても、遅かった。

その日を最後に、俊からの連絡は、途絶えた。


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