サイレント

three

暖房の効き過ぎた図書館の学習室は眠気を誘う。

祥子は英単語帳を見つめながら睡魔と戦っていた。

私立の試験まで後僅か。さすがの祥子も真面目に勉強をしようと放課後一人で図書館へやって来たものの、一体何から勉強してよいのかわからず、とりあえず苦手な英単語を一つでも多く覚えようと単語帳を開いた。

何もしてない時は一晩中でも起きてられるのに、勉強を始めると急に眠くてたまらなくなるから不思議だ。

欠伸をしながら背もたれに体重をかけ、椅子の前足を浮かせる。

学習室は高校生や他校の中学生もいてピリピリとした空気が漂っていた。

参考書をめくる音。

シャーペンを走らせる音。

祥子は単語帳を開いて15分でその場の空気に堪えられなくなり、勉強道具を机の上に開いたまま財布と携帯片手に席を立った。

大きなガラス張りになった図書館の西側に自販機コーナーがあり、祥子はそこでホットのミルクティーを買うとロビーのソファに座った。

学習室の中は飲食禁止で、前に一度ジュースを飲んでいるところを図書館の職員に見つかりねちねちと説教を受けたことがある。

外は夕日がさしていた。
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