好きってきっと、こういうこと。

あっという間にお昼休みが来た。

あたしはパソコンのセットアップが終わった相村くんに、お昼に行っていいことと午後からは業務説明や部屋の案内をすることを伝えた。


「はなさんはお昼行かないんですか?」

「うん。あたしはもう少しここにいるよ。近々抱えているクライアントとの打ち合わせ資料作らないといけないし」


この言葉を聞いた相村くんは、「それではお昼行ってきます」と言葉を残し、オフィスから去っていった。

あたしはパソコンの画面をボーっと見つめながら、今朝の光景を思い出す。


「渡辺、どうしちゃったんだろ。いつもみたいに自信満々な感じじゃなかったな……」


今日の渡辺はなんか変だった。

塚田課長はちょっと意地悪をしたって言ってた。それってどういうことだったのかな?


渡辺はあたしの新規契約の仕事も請け負ってくれているから、きっとお昼にこのオフィスに戻ってくることはない。

だけど無性に、今まで一切弱みを見せなかった同期のことが心配になってくる。


今日の飲みのときに、少し聞いてみようかな。

話してくれるかは分からないけど。


「よし、あたしも資料作らないと」


背伸びをして、給湯室にコーヒーを入れに行く。渡辺はいつもブラックコーヒーしか飲まないけど、逆にあたしはミルクと砂糖たっぷりの激甘コーヒーしか飲めない。

教育係だけじゃなくて、自分のことも頑張らなくちゃ。

再びデスクに戻ると、誰もいないオフィスで資料作りに奮闘した。

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