君を好きな理由
こんな感じ……かな?
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最近の博哉は変だ。


いつもおかしいから、おかしくないと言うか、これは普通と言えば普通と言えるのか。

海から帰ってきてから、何かが……

どこがおかしいのか、説明しろと言われても、博哉はマイルールをひたすら走り抜けるし……

ハッキリ言えないけど。


「どうかしましたか?」

キリッとした真面目な顔で言われても、具体的になっていない疑問に、逆にこっちが困るんだけどさ。


「ん。べつに」

いつものように集まっての昼休み。

磯村さんと華子はお弁当を食べているし、私は私で博哉のお弁当をつついている。

これは日常になっているけれど……

「ついてますよ」

「え?」

頬に暖かい感触。

「…………」

い、今、頬っぺた舐められた!

思った瞬間、磯村さんと目があった。


「溺愛されてんなー女医さん。俺も、葛西がそんな風になるとは思っても見なかったけど」


磯村さんたちの方が、先に慣れてきている……


「最近、人前でベタベタしすぎなのよ、貴方は!」

やたらに近い位置にある顔を押し返す訳にいかないから、肩を押すとムッとされた。

「いいじゃないですか、これくらい」

私には貴方の基準が解らないわよ!

どういう思考をしてるのよ!

だいたい人前で頬っぺた舐められて、普通にしていられる女がいるものか!
非常識にもほどがある。

思わず博哉の頬を横に広げて、彼を睨んだ。

「人前ではやめて」

「恥ずかしがりやですね」

「や。恥ずかしがりやとか、そうじゃないとか、そういう問題じゃないからね?」

「解りました」

渋々納得したから、困って笑う。

博哉はベタベタするのが好きだ。

私も嫌いではないけれど、人前では困るし、ここは何より職場だから……

時に大っぴらに、時にさりげなく、実に空気を読まずにベタベタされると困る。

「ところで、山本たちは新婚旅行から戻りましたけれど、磯村たちはどうするんですか?」

「俺ら?」

博哉の言葉に磯村さんが顔を上げ、それから華子を見る。

「まぁ、したいならもっと落ち着いてからだな」

「籍はいつになさるんです?」

「何だ、興味津々だな……お前」
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