君を好きな理由
「と、言うわけなので、GWは旅行にいきましょう」

はい?

「あのね。まったく話が繋がらないし、突然過ぎるし、こっちの予定は言ってないでしょ」

「俺のなかでは繋がってます。前々から誘うつもりでいましたから。ですが……予定は伺いましょう」

爽やかに言われても、どう扱えって言うのよ。

「だから、突然言われたって困るんだけど。しかも、旅行ならなおさら!」

「大丈夫です。柔軟に対応可能です」

「いや。だからね?」

溜め息をついて頭をかいた。

「なんだろう。葛西さんの方が年上なはずなのに、年下相手にしている気分になるんだけど」

「そんなに大差はないでしょう」

「そうだけどね。まぁ、予定はないけれど、勉強はしたいわよ」

「ならば、本をお持ちになればいい。とすると、移動手段は車にしましょうかね?」


これはまた説得の構えだわね。


……諦めるか。


「どこにいくの?」

「軽井沢にコテージがありまして。そちらに行こうかと」


……軽井沢にコテージが。

さすが坊っちゃん。


「……顧問の持ち物ですよ」

「私は何も言っていないわよ」

「言いそうな事だと思いましたから。まぁ、使える物件があれば使いますよ。保養所も考えましたが、他の社員と鉢合わせも嫌ですしね」

「ああ……確かに面倒だわね」

うんうん頷いていたら、気がつけば生暖かい視線で見守られていた。


別にいいじゃない。付き合い始めたんだし問題はないはずよ。

まぁ、葛西さんが勝手に予定組むのはどうかと思うし、結構間近で言ってくるのも困るんだけど、予定は未定だったし。

……と言うか、イキナリ旅行に行くって決めるところがぶっ飛んでるけど。

タマゴサンドをモグモグしながら華子を見る。

「そっちは?」

「え。私たち?」

「そうそう。旅行に行く感じ?」

「予約取れなかったもの。GWはどこもいっぱい」

「それならさ」

と、葛西さんを見ると静かに首を振られた。

「はるかさんが俺と同じベッドに寝てくれるなら考えますが、そもそも磯村が嫌がりますよ」


でしょうね。

と言うか、ベッドは別けてくれるつもりでいたんだ。

……何て言うか、抜かりない。


「じゃー、買い物行かないと」

「買い物……ですか?」

「馬鹿ねぇ。女には女の旅行準備ってものがあるのよ」

「そうなんですか。ああ、そうかもしれませんね。うちは女兄弟がいませんが、母が大変だ」

「大変なの?」

「まぁ、我が道を地でいく人ですから……」

「葛西さんは母親似なのね」

「え……」

ショックを受けたように固まった葛西さんに吹き出した。

「いいじゃないの、親に似るのが普通よ」

「はるかさんはどなた似なんです?」

「大伯母らしいわ。女帝に似てるって言われても困るんだけど」

「女帝はわかります。たまに高飛車ですから」

「悪かったわね!」
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