キミの心に届くまで


好きな人……。


そう言われて浮かぶのは、爽やかな柏木君の笑顔。


あたし、やっぱり柏木君のことが好きなの?



「いない……よ」



わからないけどなぜか動揺してしまい、ありえないくらい声が震えた。



ドクドクと心臓がうるさい。


この気持ちがすずにバレたくない一心だった。



「陽良なら、その気になればすぐに彼氏が出来るのに〜!」



無邪気に笑うすずに嫌な気持ちが込み上げて来る。



自分が幸せだからって、あたしにもそれを押し付けないでよ。


こんな感情を抱きたくないのに、そう思えば思うほど膨らんでいく。



「別にいらないし、興味もないよ!恋愛なんて何が楽しいわけ?」



ついつい口調がトゲトゲしくなって、なんの罪もないすずに当たってしまう。


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