【完】一粒の雫がこぼれおちて。





早口でそう言って、部屋を出た。



「ち、遅刻ううぅぅぅ!?」


「ははっ。」



途端に聞こえて来た叫び声に、思わず吹き出してしまう。





――「い、和泉くん、遅刻しちゃうよ、急いでぇええ。」


「急いでも遅刻だから。」



それから倉橋は猛スピード、僕はマイペースに学校の準備を始め。


家を出たのは結局8時半。



「ていうか、時間無いのに朝ごはん食べようって言ったのは倉橋でしょ。」


「朝ごはん食べないと倒れるもん……。」


「1食抜いて倒れたら、それ完全に栄養不足だから。」



遅れたのは朝ごはんだけじゃない。



長い髪を2つに結って、時間を食っていたのはコイツだし。


置いてて良いというのに、呑気に洗い物をしていたのもコイツだ。






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