oneself 前編
少し心が揺れ動くあたしに気付いたのか、翼は嬉しそうに話を続けた。


「1日だけじゃなくてもいいよ。とりあえずお試しで3日とか、1週間とか。それでも給料は、日払いで貰えるんだし」


あたしは無言で、16800円に日数をかけてみた。


携帯代とカードの支払い。


それを払っても、まだ十分に手元に余る。


「それにあたしと一緒なら、ちょっとは安心でしょ?店長に言ってあげようか?」


翼と一緒なら…


一人で行く勇気なんか、もちろんなくて。


翼と一緒なら、心強いのは確かだ。


哲平には、少しでも早く関わりを絶って欲しいと思っていた世界。


でも哲平が辞めるのが、いつになるかは分からなくて。


それなら…


あたしがその世界に踏み込めば…


あたしは考えていた。


テレビで見る、華やかな世界。


女の子なら、憧れもあるんじゃないだろうか。


あんな風に、自分を綺麗に着飾って。


そして、高額の収入を得る事が出来る。


「でも…」


ようやく言葉を発したあたしに、翼は優しく聞き返した。


「ん?」


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